System Fixerに込めた思い
はじめに
私はこれまで、Dirty Tester、バキバキQAという異名を名乗っていました。 いろいろ思うところがあり、2025年12月、私は私を 「System Fixer」と呼ぶことにしました。
私はもうQAでなくていいと思っています。 本当に思っています。
私のキャリアは迷走しています。 これからどんどん迷走していくでしょう。
「お前はQAじゃない」
単なる日常です。
私がやっていることはQAとして、「やるべき」だと思っていることをしています。 そして、QAとして当たり前のキャリアの延長線上にいると思っています。
しかし、最近さまざまな人からこう言われます。
「お前はQAじゃない」 「エンジニアではない」
この言葉は、私の心のキュートで柔らかい部分を何度も突き刺しました。 私はDirty Testerであり、バキバキQAであると自負しています。
テストを愛していますし、品質保証のプロを目指す1人だと自認しています。
しかし、彼らが定義する「QA」や「エンジニア」の枠組みでは、私の行動が説明できないことも事実でした。
「いつか胸を張って、QAあるいはエンジニアと言いたい」 その憧れとコンプレックスは今でも私の根底にあります。
一方で、今の私が本当に興味を持っている対象は、「エンジニアリング」そのものではなく、その先にある 「本質的な価値を追求するシステムを構築すること」 だと気づきました。
だから私は、一度「QA」という自認をやめることにしました。 誰かに否定され続けるよりも、自分で新しい名前を作ることにしたのです。
System Fixerが相手にする「システム」
私が直したい「システム」には、もちろんコンピューターシステムが含まれます。 それに加えて、これから私が対峙していきたいのは、もっと深淵で美しいシステムです。
- 組織のシステム:意思決定の構造や、権限の歪み。
- 関係性のシステム:人と人との間にある空気や、感情のもつれ。
- コミュニティのシステム:人々が集まり、熱狂を生むメカニズム。
- 世界や人間、文化というシステム:私たちが生きている文脈そのもの。
これらすべてが、複雑に絡み合いながら一つの「価値」を意味づけたり、作り上げたりしています。 その巨大なシステム全体が、私の興味の対象であり、Fixする対象なのです。
System Fixerにとっての「バグ」とは
私は、テスターとして、「バグ」というもの、あるいは「悪さ」というものを言語化するのにとても長けていると感じています。
私は「バグ」あるいは「悪さ」をコンピューターシステム以外にも見出してしまっています。
- あの人は間違っているという「不信感」
- 言うべきことを飲み込んでしまう「空気」
- 経営層と現場の間に横たわる「断絶」
- 権威と権力による「不正な操作」
これらをバグとして起票するのは難しいと思っています。 しかし、確実にシステムのパフォーマンスを落とし、そこで生きる人々の心を蝕む「致命的なバグ」だと思っています。
私はテスターとして培った「違和感を言語化する力」を使って、これらの難しいバグを特定するでしょう。
System Fixerとなった私はそれだけにとどまりません。 修正パッチを当て続けます。
テスター出身の私だからこそ、誰よりも早く、その「バグ」を見つけ出します。 そして私はそこに修正パッチを当てられるようになりたいのです。
直すことの美しさ
「Fixer(直すやつ)」と名乗ると、「壊れたものを元通りにする修理屋」と思われるかもしれません。 しかし、私の考える「直す」は、完璧な状態や、誰かが考える「あるべき姿」に戻すことではありません。
私はシステムは生きていると捉えます。 直しても、また壊れます。 壊れ方や直し方によっては、そこに傷跡が残るかもしれません。
私はその傷跡にこそ、歴史を感じ、味わいを感じています。
古い家具が、何度も修理され、塗装を塗り直され、現代でも価値あるアンティークとして残りますよね。 組織やシステムも、ただ「古いから」といって、捨てられたり、リプレイスされる必要は、必ずしもないと思っています。
新しい要素を取り込み、継ぎ接ぎだらけになりながらも、現代において価値を発揮し続ける。 そんな 「金継ぎ」された器のように 価値を保ちながら生き延びさせること。
それが、私の目指す「Fix」です。 傷一つない新品よりも、傷だらけで動き続けるシステムに、私は愛おしさを感じるのです。
捨てるという選択
Fixerという言葉をあえて使ったのには、どうしようもない悪はそれでも捨てるしかないという意思も込められています。
なぜ「マネージャー」や「コンサルタント」ではないのか
これらを考えるとき、「マネージャー」や「コンサルタント」「先生」でもいいじゃないか、と言われるかもしれません。実際にGeminiに言われました。
私はそれらを権威として扱われてしまうことを懸念しました。 権威的な人々は「マネージャーだから言うことを聞け」「コンサルだから正しい」という認知や発言をしてしまいます。 ポジションで仕事をすることは、私の道徳に反します。(むろん、そうでない人々いることも承知しています)
私は、自分の実力と信頼で、世界を直していきたいと思っています。 これは、特別な人ではない私がやることで、誰しもが直せる世界でありたいと思うからです。
そして何より、「Fixer」という言葉に含まれる 「手段を選ばない」 というニュアンスが気に入っています。 これはダーティハリーから受け継いだ私のポリシーであり、パルプ・フィクションのウルフでもあります。
綺麗事だけではシステムは変わりません。 時には裏で手を回し、時には毒をもって毒を制し、泥にまみれて交渉することも必要かもしれません。
本質的な価値と実利は違うかもしれません。 しかし私は、まだどちらも諦めたくないと思ってしまいます。
表舞台で拍手される必要はありません。 気がついたらシステムが直っていて、人々がイキイキと活動していればそれでいいです。 「誰がやったかわからないけど、なんか良くなったね」そう言って、私が去った後のシステムで人々が笑っていれば、それはFixerとして十分でしょう。
そんな中でもわかってくれる人だけが、私と同じように世界を直していけるようになることを私は願っています。
System Fixerにおける道徳
手段を選ばないと言いましたが、私には一つだけ、絶対に破らない「道徳」があります。
それは、「人を自己実現の対象として扱わない」 ということです。
私がハックし、破壊し、直すのはあくまで「システム」や「関係性」であって、「人間そのもの」ではありません。 たとえ対立し、喧嘩をする相手であっても、その人の尊厳を傷つけたり、騙して操ったりすることは、道徳としてやってはいけないと思います。
クリント・イーストウッドが法を破っても無辜の市民を守るように、私はシステムのルールを破っても、そこで生きる人々の「尊厳」は守りたいと思っています。 むしろ、システムによって圧殺されそうになっている人々を救うために、時に私はシステムの方を壊すことを選ぶと思います。
良いシステムには「偶発性」がある
私が手を入れたい「良いシステム」には、 「実験的・生成的な要素」 が含まれています。 ガチガチに管理された統制システムではなく、予期せぬ化学反応が起きたり、新しいものが勝手に生まれたりするような「偶発性」のあるシステムです。
そういったカオスなシステムを、Fixerとして作り出したり、暴走しないように裏で調整したりすること。 それが私の今の楽しみであり、最大のミッションです。
Fixerの終わり
Dirty TesterやバキバキQAには「終わり」を作っていました。 System Fixerには?
ない気がしています。
なぜなら、世界には絶えず新しいシステムが誕生し続けるからです。 一つのシステムを直しても、また別の場所で新しいシステムが生まれ、そして壊れていくでしょう。
そして世界はそうであってほしいと願っています。
世界自体が生成的であり、そこから生まれたものを直し、愛でるために私は存在しているのだと思っています。
ところで、私のキャリアはどこに迷い行くのでしょうね?
https://www.youtube.com/watch?v=tIe-kXTmj3E
Appendix:【追記】System Fixerを動かす5つの強み(私の資質)
私がなぜ直したくなるのか、なぜ「迷走」するのか。 その背景には、ストレングスファインダーにある5つの資質によるものだと思います。
- 内省
徹底的に考え抜く力です。 思考の瞬発力を保ちながら、同時に脳内では常に「言語化」への強いこだわりが稼働しています。 違和感を曖昧なままにせず、最も解像度の高い言葉やロジックとして定着させるプロセス。それがSystem Fixerの活動の起点です。 - 最上志向 (Maximizer): 金継ぎの職人
平均点への復帰では満足できません。 壊れたシステムを、単に元の状態に戻すのではなく、以前より価値ある状態へ昇華させたいと常に願っています。 この資質が、傷跡を価値に変える「金継ぎ」の思想につながっています。 - 着想 (Ideation): 概念の発明家
一見関係のない事象(ソフトウェア品質と組織論、人生観など)を結びつけ、新しい視点を生み出します。 既存の枠組みでは解決できない問題に対し、「System Fixer」という独自の概念や解決策を生成できるのは、この資質によるものです。 - 原点思考 (Context): 歴史の語り部
「古いから捨てる」を嫌います。 そのシステムや組織がなぜ作られ、どのような歴史を経て現在に至ったのか。 その文脈を深く理解し、尊重した上でなければ、未来に向けた適切な修正は行えないと考えています。 - 慎重さ (Deliberative): 暴走を防ぐブレーキ
リスクに対する高性能なセンサーです。 臆病なのではなく、その介入が「道徳」に適合しているか、人の尊厳を傷つけるリスクはないかを常に精査しています。 この倫理的な安全装置が正常に働いているからこそ、System Fixerは大胆な破壊と再生を実行できるのです。