はじめに
先日、友人がXで「失敗」についてポストをしていました。 https://x.com/tokucha_qa/status/2065418880248631367?s=20
これを見て、私自身も「うまく失敗する」ということについて考える機会をもらいました。 本稿では、友人のポストにインスピレーションを受けつつ、うまく失敗するために必要なことについて私なりの考えをまとめてみたいと思います。
うまく失敗するために必要な4つのこと
うまく失敗していくためには、以下の4つの要素が重要だと考えています。
- 早く失敗すること
- 失敗したら軽くても毎回ふりかえること
- 失敗したら、失敗を許してくれる人・気にしない人と話すこと
- 成功パターンを見つけたら、それを脇に置いて手放すこと
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1. 早く失敗すること
これは、時間的遅れが発生する前にフィードバックを得るということです。 「なるべく早く確認できる事実から想定を広げる、仮説を作る」という考えに基づいています。
2. 失敗したら軽くても毎回ふりかえること
重い振り返りをたまにやるよりも、小さなふりかえりをたくさん回すことがより重要だと考えています。 アジャイルやEBMなどの経験的アプローチのように、毎回できるだけ「ひとつの仮説」を確かめるように行動し、振り返ることが具体的な行動や学びにつながるという考え方です。
3. 失敗したら、失敗を許してくれる人・気にしない人と話すこと
これは単なる慰めや癒やしを求める行動ではありません。 自分を評価するシステムの外側にいる人と話すことで別の視点を得るとともに、「そのシステムの外側にも自分の生命(居場所や存在意義)がある」と実感することが重要だと考えています。
失敗は失敗です。ただそれのほとんどは特定のコンテキストの中で発生した物事の見方であり、現実は多面的である。 そして生きることを否定するものではないと知ることが大切だと考えています。
4. 成功パターンを見つけたら、それを脇に置いて手放すこと
これが最も本質的なポイントだと考えています。 最初は1〜3の「失敗サイクル」がうまく回っていても、成功パターンを見つけた瞬間にこのサイクルが止まってしまうことがあります。 それに固執した結果、落ちぶれて破滅した人もいたかもしれません。これはとても悲しいことです。
ここにおける表現のポイントは、成功パターンを「捨てる」のではなく、「脇に置く」ということです。 見つけた成功パターンは、また必要になったときに拾い上げればよいのです。
なぜ、成功パターンを大切に持ち続けてはいけないのでしょうか。
それは、成功パターンに執着しすぎると、かえって前述した「1〜3」の行動ができなくなってしまうからです。 「このやり方でうまくいくはずだ」という過去の成功体験は、新しい挑戦を遠ざけ「早く失敗する」機会を奪います。 また、うまくいかなかったときに「やり方が悪かっただけだ」と本質から目を背け、フラットな「ふりかえり」を阻害します。 さらに、成功者としての自己像を守るために、他者に失敗をさらけ出して「話す」ことができなくなってしまいます。
悲しみは連鎖します。
成長の限界というシステム原型
4で挙げたこの状況は、システム思考における「システム原型」でいうところの「成長の限界」として説明できます。
ある成功パターンを見つけ、それを適用することで最初は急激な成長や成果のループが得られます。 しかし、環境の変化や組織の拡大などによって、必ずどこかで限界にぶつかります。 ここで成功パターンを大切に持ち続けてしまうと、限界に直面しているにもかかわらず、さらに同じ成功パターンを強く押し進めようとしてしまい、結果としてシステム全体が疲弊し成長が止まってしまいます。
「成功パターンを脇に置く」というのは、この「成長の限界」を予期し、自ら意図的に限界の手前で新たに失敗し、学習する勇気を持つことです。 脇に置くことで余裕が生まれ、また新たな「早い失敗」を繰り返しながら、次のステージに適応した新しい形を模索できるようになると考えています。
これこそが学習する組織であると考えています。
おわりに
失敗を恐れないためには、「成功への執着を手放す」ことが必要だという皮肉な現実を言葉にしていました。 過去の成功は確かな財産ですが、それに縛られることなく、いつでも脇に置ける身軽さを持っていたいなあと思ったりしています。
そして強調して言っておきたいのが、私自身がこれらを完璧にできているわけではありません。
特に、「自分が成功パターンに固執していること(4のステップ)」を自らメタ認知することは非常に困難です。 だからこそ、私は対人支援の力を借りていますし、同じようにシステムの中で悩む人に向けて、自ら対人支援(コーチングやファシリテーションなど)を提供する側にもなったりしているのです。
ところで、「うまく失敗する」という考えや「対人支援を使う」も成功パターンに固執してないですかね??
参考文献
- デイヴィッド・ピーター・ストロー(著), 小田理一郎(監訳), 中小路佳代子(訳), 井上英之(日本語版まえがき)『社会変革のためのシステム思考実践ガイド――共に解決策を見出し、コレクティブ・インパクトを創造する』英治出版, 2018年
- Patricia Kong, Todd Miller, Kurt Bittner, Ryan Ripley(著), 長沢 智治(訳)『EBM実践ガイド: アジャイルマネジメントフレームワーク』丸善出版, 2025年
- 畑村洋太郎(監修)『失敗から知識を吸収し120%の結果を出す! 失敗学見るだけノート』宝島社, 2022年